2007.8. 3 『猫 奇跡の生還』
7月24日午後3時頃、出張先の京都河原町で、食事をしていた店の窓から外を見下ろす と、車道にヨロヨロと小さな猫が出てきました。「危ないよ!」と思う間もなく、猫の上をトラックが走り去り、後には腰のあたりをはねられ、変形した足で立てずにうず くまっている猫が残されました。
まだ生きている、でもこのままでは後続の車に轢かれてしまう、と立ち上がろうとしたとき、若者が車道に走り出て、その猫を抱き歩道に移しました。「よかった...」とホッとしたのもつかの間、彼は立ち去ってしまいました。
もう、こうなったらと、意を決して食事を切り上げ、商談相手と一緒に猫を箱に移し、病院を探してインターネットや地元の知人に電話したりと右往左往。「野良猫はお断り」と何件も断られた末に、なんとか受け入れてくれる病院を見つけて、同じく現場に居合わせ救出を手伝ってくれた女性と一緒に、タクシーで連れて行きました。
レントゲンと血液検査をした結果、獣医さんは「即死でもおかしくない。膀胱がレントゲンに映らないので、破裂しているかも知れない。肝臓の値も計測不能なほど高い。肋骨が片肺に刺さっている。大腿骨の複雑骨折で自力排便もできない。しかも白血病が陽性です。いま助かっても数年の命だから、安楽死させましょう」と仰った。こちらも、そんなに酷いのなら仕方ない、と泣く泣く安楽死承認の書類にサインしました。ところが、最後にと猫を撫でてやると、なんとゴロゴロいうのです。痛み止めの注射が効いているせいか、呻きもせず、一見穏やかにうずくまっている姿を改めて見ると、 到底、すぐに安楽死させる気にはなれない。「なんとか、だめでもいいから一晩様子を見てやって欲しい。もし本当に苦しくて仕方ない様子なら、その時は安楽死させてやってください」と 獣医さんに懇願し、その日の入院費と安楽死・埋葬費用もお支払いをしたうえで、一 晩面倒を見ていただくことになりました。
翌日電話をすると、なんと「まだ生きている」。それだけでなく、少量の餌を食べ尿が出たとのこと。その翌日はさらに餌を食べ、5日後にはなんと自力で排便をした!しかも、立てない腰をよろけさせながら看護師さんに甘えてすり寄って来るという..。
.この猫は生きようとしている。たとえ猫白血病保持だとしても、少なくともいまはまだ生きようとしている。これはもう、東京に連れてきて、可能な限りの治療を受けさせてやろうと決意したところ、事故現場に居合わせた商談相手が、ちょうど東京出張に来るとのこと。「そんなことで力になれるなら」と、8月1日新幹線で連れてきてくれました。
獣医さんの見立てではまだ生後6ヶ月。人懐こいところから察するに、一度は飼われ、捨てられたようです。ひどく痩せて(1.7kg)蚤だらけだったので、何日も食べられずに京都の街中を彷徨っていたのでしょう。そのあげくにトラックにはねられ...それでもまだ、人にゴロゴロいうことを忘れていないこの猫を、なんとか助けたい。カルテの 「ノラ猫ちゃん」が可哀相なので、一緒に救出をしてくれた女性に名付け親になってもらい、「これから幸せになれるように」と『幸(さち)』という名前をもらいました。
ウィルス保持なので、先住猫のいる我が家に迎えてやることはできず、「動物の幸せを結ぶ会」の加藤さんのご好意で保護していただけることになりました。人間には救急車があるけれど、動物にはない。
幸ちゃんの他にも、誰かが助ければ助けられる命はたくさんある。
目の前に起こった事故にも、莫大な治療費やそのあとの面倒を考えてしまうと、どうしても助けの手が伸ばせない....そんな現状の中、今回自分は他に選択の余地もなく行動してしまいましたが、それも周りにいた、色々な意 味で身を削って助けてくださった方々のおかげです。
そんな皆の祈りを背負った幸ちゃん。
なんとか怪我を、そして免疫力を高めて猫白血病ウィルスをも克服して、「幸せ」になることでみんなに勇気を与えて欲しいと思います。