産経新聞2002年12月30日

「小さな命」に責任と義務

幸手署の捨て犬親子

年の瀬記者ノート

「あの子たちを助けたい。幸手署に話したが聞き入れてもらえない」
 10月23日、記者のもとに栗橋町の女性から電話があった。同署が保護した捨て犬の母子8匹を引き取りたいという。この日、埼玉版で取り上げた記事に対する問い合わせだった。受話器の声から女性の焦りを感じた。

 この女性は、飼い主に捨てられた犬や猫を保護し、里親を見つける運動をしている「動物の幸せを結ぶ会」代表の加藤緑さん(53才)。
「絶対、保健所に連れていってはいけない」と訴えた。その結果、母子8匹は保健所行きを免れ、加藤さんが引き取ることになった。
 一方、同署には「里親になりたい」という声が殺到した。3日間で問い合わせは90件を超え、担当者は「他の仕事が手に付かない」とこぼすほどだった。
「どんな小さな命でも守ってあげたい」と、始めた加藤さんの活動は、約16年になる。転職や引っ越しも繰り返した。

 手元には里親と交わした約千匹分の誓約書がある。
「不妊去勢手術を終えるまではあなたの犬とは認めない…」。二度と同じ悲劇を繰り返させないために、里親がとらなければならない最も重要な義務だ。
 自宅には常に里親を待つ犬や猫が40匹ほどいる。毎日、相談や問い合わせの電話が立て続けに入ってくる。散歩や掃除にボランティアの協力が欠かせない。
「私は捨てられた犬や猫の保護に悪戦苦闘しているが、その本質はそういうことをする人間と戦っているんです」と加藤さんは話す。

 昨日まで愛犬家だった人が自分の都合で簡単に犬を捨てる。「犬を飼っていれば愛犬家というのは間違いです」と指摘する。子供にせがまれて動物を飼うのが一番飽きやすく、危険という。「安易に飼う人は安易に捨てる人になる」という加藤さんの言葉が響く。
 その後、子犬7匹は厳しい条件をクリアした県内外の7家族の里子になった。残った母犬は、幸手署でもらわれたことから「幸」と名付けられ、仲間と暮らしている。

(飯田英夫)

関連書籍(加藤緑さんが保護した犬たちのお話)

 
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